■ 和田良覚×所 英男対談  <対談>「和田の穴」を訪ねる。 その22006.12.29

■ロシア人選手と桜庭選手の共通点


--その足の締め付けの力を強くするためには、どういうトレーニングが必要なんですか?

和田 股関節からバランスまで大事ですが、特にランジ系のトレーニングがいいですね。サイドランジ、フロントランジ…もちろんスクワットも大事です。内転筋を使うような。あとは腸腰筋(ちょうようきん)という深層部の腹筋があるんですが、それも股関節に関わりがあるとても重要な筋肉なんです。
所 僕もコピィロフ級の足の力が欲しいです。
和田 そりゃあ欲しいよね。
所 あったら嬉しいですよ!
和田 でも、それは無理! あれはロシア人だからだよ(笑)。でも、強くする事は可能だよ。やり方次第だから。


--日本人でその足の締め付けが強かった選手はいましたか?

和田 それはサクですね。彼は脇の力や腕力があって、クラッチも強くて極めが強いんだけれど、内転筋でギュッと締める力も凄く強いよ。


--そういえば、桜庭選手とスパーリングをやった選手は「細いのにゴリラのような力がある」と桜庭選手を評していましたね。

和田 そうでしょう? 所君も今度、サクとスパーリングをやってみるといいよ。
所 いやぁ…お邪魔にならなければ、やれるものならやってみたいです。
和田 だから若い選手は、サクとスパーリングをやるとみんな憧れちゃうんですよ。桜庭さんはやっぱり凄い、って。本当だよ。やってみるのが一番手っ取り早い。だって、肌で感じるんだもん。
所 いやぁ…ぜひお願いしてみたいです。
和田 サクに限らず、みんな十何年も練習をやってるんだよ。それで完成されていくんだもん。そんな簡単には覚えられないよね。
所 本当、それは感じますね。
和田 みんな積み重ねですよ。何だかんだ言っても。タムちゃん(田村潔司)や金ちゃん(金原弘光)もそう。俺は見てきたから分かるけれど、みんな血ヘドを吐いてきたもん。よくやってきたと思う。みんなそういう思いをして手に入れているんだよ。
所 だからこそ、元Uインターの人たちは選手生活を長く出来るんですね。
和田 そう、そのスキルを身に付けているからだね。所君も大丈夫だよ!


■和田和尚の人生問答!?


--所選手は連敗しているので、最近ちょっと落ち込み気味なんです。

和田 たまたま負けが続いただけだよ。頭を切り替えるしかないじゃん。もう、しょうがないよ。負けは負けだから。次、頑張るしかない。人間なんて常にいい精神状態を保てないし、逆にいい状態でもスコーンと負けてしまう時もある。ダメだなって思っていても、1回勝ったらそれを機に連勝することだってある。人生と一緒だよ。
所 はい。和田さんはいろんな選手を見てきている方なので、凄く勉強になります。説得力がありますよね。最近、ずっと練習を休むようにしていて、いろいろ考えていたんですが何も答えがないなっていうのが分かりました。
和田 トレーニングと一緒だよ。ツライ思いをしてそこで耐えられたら、今度はそこが平均値になる。それでまた一段階上がって、前のアレはツラかったけれど、その経験があるから耐えられるとか。そうやって人間って強くなるんじゃないの? それは格闘技だけじゃなく、人生も一緒。あとはどこで切り替えるかだよ。
所 そうですね。自分もそろそろ切り替えないといけないと思います。
和田 切り替えた方がいいよ!

 
--いやぁ、『和田和尚の人生問答』みたいな感じになってきましたね。

所 かなり元気になってきました。
和田 本当かよ(笑)。俺が思うに、所君が勝っていた時っておそらく格闘技を楽しくやっていたはず。いま、楽しくないでしょう?
所 はい、前とはちょっと違う感じがします。今までが楽しんでやっていただけに…。
和田 そうでしょう。サクも同じタイプなんだよ。このタイプは楽しくやっていれば勝てる。勝っている時って楽しかったでしょう? 試合前の練習でも緊張はするけれど、格闘技を楽しく捉えていたはずなのに、今は違う感じがする。
所 ああ、そうですね。何か勝手に思い込みの中だけの世界でやっていたような気がします。
和田 段々立場が上がっていくと、プレッシャーとかいろいろあるけれどね。でも、それはみんな一緒なんだよ。


■人間の体の使い方はどの競技も変らない


--ところで和田さん、先ほどから僕らがいるこのジムは一体何なんでしょうか? 一般会員を募集しているわけでもないようですが。

和田 たまたま知り合いの方からスペースをお借りすることが出来たので、プロの選手だけを対象にして教えているプライベートジムです。団体やジムの垣根に関係なく、みんなで練習できるスペースを作ろうというのがコンセプト。僕がプロのトレーナーとして、責任を持ってプロの選手だけに教えています。


--例えば所選手が和田さんに教えてもらいたい、と言ってきたら…。

和田 そうなったらプロの契約として、ちゃんとやります。
--ただウェイトトレーニングをやるのではなく、格闘技に必要なものに特化して教えるんですね。

和田 間違いなくパフォーマンスは上がります。それには絶対的な自信を持っていますね。ただ、俺のスタイルは格闘技に拘ってはいないんですよ。野球選手もいればサッカー選手も見ていますから。基本の軸は変わらないんです。投げたり飛んだり走ったり打ったりというのは、人間の体の使い方はみんな一緒なんですよ。「これはこうだから」というような変ったことはやりません。トレーナーの先生によっていろんな理論はありますが、僕のスタイルはそういうものです。基本は野球選手もサッカー選手も格闘技選手も変らない。そこにその競技の特異性の種目を少し入れているだけですね。整体と一緒で合う合わないもあるので、もし合わないんだったらどんどん切ってくれと最初に言うんです。


--「ハイパーストレングス」とはどういう意味ですか?

和田 力とか筋力トレーニングのことを業界のトレーニング用語でストレングスと言うんです。ハイパーは過度な、極端なという意味。まさにその言葉のままなんですよ、僕のスタイルは。ちょっとキツイですけれどね。


--所選手はフィジカル・トレーナーに付いて教わった経験は?

所 ほとんどないです。ウェイトのジムに行った時、ちょこちょことアドバイスをしていただいたくらいですね。和田さんの話を聞いていて思ったのは、信じてやれば大丈夫なんだなって。
和田 それはどんなトレーナーに付いても一緒。信じてやることが大事なの。流行だからこのやり方をやろう、あっちのやり方をやろうってちょっとつまんでは次に移るっていう人がけっこういるんです。でも、そういう人は効果が出る前に移るから、モノにならない。合わないと思えば切り捨ててもいいけれど、信じてやることが理論プラスアルファで繋がっていくんです。


--所選手も興味が出てきましたか?

所 実は前から興味がありました(笑)。


--では、こういうトレーニングをやってみたい、ここを鍛えたいというのはありますか?

所 持久力と瞬発力とパワーと……
和田 全部欲しいよね(笑)。それには専門用語で言えばピリオダイゼーションというのをやらなければいけない。オリンピック選手がよくサイクルでフィジカルを創っていくじゃないですか。例えば一日の運動でパワー系の種目と持久的な種目をやって、両方得るなんてことは出来ないんですよ。何かを得ようとすれば何かを失うんです。だって、トレーニングのエネルギー形態が違うんだもん。それはサイクルの中で段階的にやっていくしかない。出来ないことはないですが、簡単ではないです。


--1年がかりのサイクルでやるんですか?

和田 いや、そこまではかかりませんね。やり方次第ですが。1ヵ月でというのは自信ありませんが、3ヵ月から半年あればいけると思います。徐々に創り上げていくという感じです。
所 僕も今度、ぜひお願いします!


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